まちと理性 ―商店街を知るための内視鏡的視座―

商店街内部(事務局職員)の視点で地域社会を考える

2018-01-01から1年間の記事一覧

日替わり店舗の功罪

日替わり店舗をご存知だろうか。 日替わりと言っても、たいていの場合、3日間から1週間くらいの単位で、 異なるお店が次々と交代して営業する店舗形態のことである。 商店街業界では「ワンデーショップ」などとも言われている。 一般的にはサブリースと呼…

閑話休題③ 地域情報難民

商店街の事務員を辞職してから、地域の情報が入って来なくなった。 閉店や開店する店の情報はもちろん、火事や事故、町の役員さんの訃報、 イベントや説明会、テレビ撮影の情報に至るまで、知らないことばかりだ。 考えてみると、商店街事務所という場所は、…

機敏で柔軟な地域力の記憶

以前このブログで、商店街組織や地域社会の議論不足について触れた。 商店街創設期、創業者たちは繰り返し議論を重ねたはずだが、 後継者たちは、その議論の成果を継承して来なかったのだと書いた。 このことは、かつて零細小売商の強みだったはずの柔軟さや…

閑話休題② 通行量調査の不思議

商店街の繁栄度合いを示すデータとして、通行量というものがよく使われる。 その街のおおよその様子を知るための基礎データとして 1日の通行量何万人という数字が目安にされている訳である。 商店街に携わる者として、かねがね私は不思議に思っていたのだが…

何のために福引セールをしているのか

なぜ自分たちが商店街をやっているのか、という議論に続いて、 何のためにその活動、その事業をやっているのか、という議論をしてみよう。 我々は、うっかりすると、いつも手段としてやっていることが いつの間にか目的に変わってしまいがちである。 例えば…

商店会の存在意義と小学3年生

商店街の理念を打出すためには「合意形成」が必要だ、と以前書いた。 「合意形成」のためには時間をかけてとことん議論しなければならない。 成果のある議論をするためには、話し合う技術を身に付けなければならない。 いかなる議論も、技術と準備なしには結…

商店街活性化という呪文(その2)

「商店街活性化」という言葉を商店街内部ではほとんど聞くことがない、 という話を以前書いた。 外部の人は好んで用いる言葉なのに、商店街の当事者はあまり好まない。 外部の人には便利な言葉であっても、当事者には胡散臭く聞こえてしまう。 この感覚の違…

外国人と地域商店街の現代事情

東京の主要な商店街だけでなく、ややローカルな街でも、 外国人が経営するお店をよく見かけるようになった。 特に外国料理の店などは、この数年で急増しているように思う。 私が勤務していた商店街でも、路面店にハラル食材の店が出店したり、 アジア料理な…

閑話休題① 論文のための論文

最近、ヒマにまかせて地域社会関係の文献を読みふけっている。 この分野ではアンケート調査をまとめた報告論文も少なくない。 非常に参考になるものは多いが、設問方法と分析結果に無理があるなと 思ってしまうものも目にすることがある。 何となく、論文の…

商店街の理念について

商店街の「理念」や「ポリシー」「コンセプト」「方向性」「ビジョン」 といったものを、どのように考えているのか、という質問を しばしば商店街事務局として受けることがあった。 恐らく商店街を見渡した時に、そのようなものが あまり感じられないので、…

商店街を知る③ 会社でもなく、公共団体でもない商店街組織

どこの町にも、たいてい大なり小なり商店街がある。 近年はともかく、昭和の時代は人の住むところに必ず商店街があった。 その意味において、商店街は誰にも身近な場所であったはずだ。 ところが、商店街がどのような組織で、どのように運営されているのか、…

商店街活性化という呪文(その1)

商店街の中にいて、いつも不思議に思っていたのだが、「商店街活性化」 という言葉は、どういう訳か、商店街内部ではほとんど聞くことがない。 外部の人は好んで用いる言葉なのに、 商店街の当事者は、滅多にこの言葉を口にしないのである。 私自身も、実は…

テレビの撮影と商店街

テレビ番組で、毎日のように商店街が取上げられるようになってから もう10年くらいになるだろうか。 最近では、有名なタレントが商店街に来てロケを行うことも まったく珍しい光景ではなくなった。 実際、私が所属した商店街にも、多くのタレントさんが撮…

商店街を知る② 東京の商店街形成と木密地域

商店街について考える上で、押えておきたい問題のひとつとして、 「商店街」という言葉の成立ちについて以前取り上げたが、 今回は東京の商店街の成立ちについて見ておくことにしたい。 東京で有名な商店街といえば、例えば、戸越銀座商店街や巣鴨地蔵通り商…

運転手のいないバス

商店街の内情を知ろうとして、様々な人たちが商店街事務局を訪れる。 例えば官公庁、商工会、中小企業診断士、大学教授はじめ研究者などなど。 そうした方々と意見を交わすとき、私は商店街をバスに例えることがあった。 うちの商店街は「運転手のいないバス…

事務局は、出しゃばるな

私が商店街事務所に就職して間もない頃、 元事務局長だった先輩から繰り返し教えられたことがある。 「事務局は、出しゃばるな」というものだ。 当時、このことで何度も注意されたのを覚えている。 元事務局長の先輩は「事務局はお留守番だ」とも言っていた…

商店街を知る① 商店街という言葉の成立ち

商店街についてあれこれと考えていく上で、 知っておくべきそもそもの疑問を、いくつか確認しておきたい。 ここではまず「商店街」という言葉の成立ちについて考えてみようと思う。 定かではないが、「商店街」という言葉が使われるようになってから まだ1…

それをするのは誰か?

木暮衣里氏の「これからの商店街支援のあり方」を読ませていただいた。 (全国商店街新興組合連合会『商店街PLAZA』№435/2018年冬号所収) 木暮氏は、平成27年度の『商店街実態調査報告』に掲載されている 「商店街の専従事務局員数」のデータを紹介…

男社会とブラジャーの着心地

商店街という業界に飛び込んで、一番初めに私が抱いた疑問は 「なぜ商店街は男が運営しているのか」というものだった。 これは、私が所属した商店街に限らず、 全国の多くの商店街に共通して言えることで、 歴史的な経過を眺めても、女性主導で運営された 商…

よそ者の目

もう記憶も薄れてきたのだが、14年前、 商店街の事務員になったとき、外の世界から見て、 商店街という業界がいささか歪んで見えたことを思い出す。 その当時、私は商店街のここが妙だな、腑に落ちないな、 と感じた疑問の幾つかを率直に役員たちに向けて…

はじめに

昨日、私は或る商店街の事務局を辞職した。 14年間お世話になったその商店街では、多くの経験をさせていただいた。 本当に有難いことだと感謝しているし、ラッキーだったとも思っている。 退職の理由はいろいろあって、これから少しずつ そのことも書いて…