それをするのは誰か?
木暮衣里氏の「これからの商店街支援のあり方」を読ませていただいた。
(全国商店街新興組合連合会『商店街PLAZA』№435/2018年冬号所収)
木暮氏は、平成27年度の『商店街実態調査報告』に掲載されている
「商店街の専従事務局員数」のデータを紹介しつつ、
商店街におけるマンパワーの実態を指摘されている。
データでは、事務局員ゼロの商店街が全体の70.8%を占めているとしている。
国や自治体が、いくら手厚い支援メニューを用意しても、具体的に
そのメニューを実行する人員がいない上、支援策の情報すら把握していない
というのが実態である。
一方、業種構成が物販店から飲食店・サービス店へと大きく変わっており、
商店街運営に携わる仲間も減少している。もちろん人を雇う資金もない。
従って、まずは中小企業診断士などの資格を持つ人材が、3年程度、
商店街に張り付いて支援活動ができるようなメニューを作るべきだ、
と木暮氏は主張される。
全くその通りだと私も考える。
「専従事務局員」だった私の経験から、ひとつ付け加えておきたいのは、
有能な人材が商店街に派遣されたとしても、
その人が何でも自由に実行できる訳ではない、という現実である。
水を差すようで大変恐縮なのだが、
商店街はトップダウン型の組織ではなく、加盟店みんなの理解を前提に、
代表となる役員が運営する組織である。
全店舗ではないにしろ、少なくとも役員の店舗からは承認を得なければ
どんな事業も前には進まない。実はそこが非常に厄介な問題なのである。
マンパワーが必要だというご指摘は、大いに賛同できることで
是非とも進めていただきたいと考える。
しかし、その先にも次の問題が待ち受けており、それが意外と大きな問題
であることも、頭に入れておかなければならないだろう。
論考の続きで木暮氏は、商店街ごとに異なる状況に応じて専門性を持った
支援対応が必要だと述べておられる。かねがね私もそう考えていた。
また、空き店舗問題が日本社会の空き家問題を予言し、
店の後継者不足が日本の少子高齢化社会を予言していたかの如く
商店街の課題は、将来の日本社会の縮図だとも指摘しておられる。
ひとり商業だけの問題と片付けるなかれ。
社会問題全体の兆候と心して注視せよ、という警鐘である。
地域には、まだ名前の付いていない社会的課題の卵が
少なからず産み落とされているのに違いあるまい。
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