まちと理性 ―商店街を知るための内視鏡的視座―

商店街内部(事務局職員)の視点で地域社会を考える

閑話休題② 通行量調査の不思議

商店街の繁栄度合いを示すデータとして、通行量というものがよく使われる。

その街のおおよその様子を知るための基礎データとして

1日の通行量何万人という数字が目安にされている訳である。

商店街に携わる者として、かねがね私は不思議に思っていたのだが、

通行量調査は、実は基準が曖昧で、他の街と単純に比較することが難しい。

何時から何時までを計測し、平日か休日か、天気や気温などの環境、

自転車やバイクを含めるのか、親に抱かれた子供も含むのかといった

統一の基準があるわけではないのである。

そうした条件は、計測される度毎に異なっているため、

同じ場所で測定したデータでも単純に比較できないことが多い。

にも関らず、目安として利用されているのは、何とも不可解である。

 

どのような条件で測定するかは、依頼主と調査する者とが話合って決める。

私が関係した調査では、ほとんどが調査機関の判断で条件を設定しており、

どちらかというと、こちらはお任せする形に近かったように思う。

多くの場合、店舗の大半が営業する時間に合わせて10時~19時に計測し、

平日の雨が降っていない日を選び、自転車、徒歩、ベビーカーなどの分類、

性別、方向などの区別をデータに盛り込んで、1時間ごとに数字を出した。

調査員が交代で絶え間なく計測する場合もあれば、30分計測して2倍したり、

15分計って4倍することも希にあった。

 

このように通行量調査の基準は一定していないのだが、過去の調査と比較して

大きく数字が変わるということもほとんど無かった。

もちろん計測する時間を長く取れば、数字は増えるし、

通勤通学の時間帯を含めて計測すると、その数字も大きく変わる。

繁華街などで計測する場合、通行目的が判別できず、早朝から深夜まで

計測時間に含めていることもあるかもしれない。

従って、通行量は単純に比較しても厳密にはあまり意味が無いものであり、

詳細な計測条件を考慮した上で比較検討すべきデータであると言えるだろう。

 

ついでに言うと、こうしたデータについて商店街支援者(診断士や役所)は

熱心に関心を寄せるのだが、商店主たちはあまり興味を示さない。

毎日店頭で接客しているので、肌感覚で感じ取る印象の方が正しいと

思っているからであろう。

データを出しても、そんなことはない、数字が間違っている、と

否定して受け入れようとしない商店主もいる。

通行量調査では、買い物目的なのか、ただ通行しているだけなのか、そこまで

計測している訳ではないから、肌感覚の方が実態に近い場合もあるだろう。

通行量調査は不要だ、と言うつもりはないが、

データの意味を評価するのは人間であり、最終的に人間がどう判断するのか、

という部分に問題の本質があることは見失わないようにしたいものである。

 

#地域社会 #商店街 #通行量調査