まちと理性 ―商店街を知るための内視鏡的視座―

商店街内部(事務局職員)の視点で地域社会を考える

外国人と地域商店街の現代事情

東京の主要な商店街だけでなく、ややローカルな街でも、

外国人が経営するお店をよく見かけるようになった。

特に外国料理の店などは、この数年で急増しているように思う。

私が勤務していた商店街でも、路面店にハラル食材の店が出店したり、

アジア料理などの飲食店が相次いで開業した。

当然、外国人経営者に対しても商店街の費用負担をお願いするのだが、

言葉の問題、習慣文化の違いもあり、なかなか協力してもらうことが難しい。

自分は外国籍でも税金を払っているのに、なぜ商店街にお金を払うのか?

と質問されたこともある。

理由を説明をすると、今度は日本語が分からない、と逃げられる。

外国人を差別するつもりは全くないのだが、

さりとて特別扱いする訳にもいかない。

残念ながら商店街にとって、対応に困る相手であることは否定できない。

 

ところで十年ほど前から、地域の商店街でも駅前などに立地するビルが

投資目的で大手資本に買取られる話を耳にするようになった。

しかも最近では、国内資本だけではなく、アジア系の外国企業が

商店街の古い木造店舗物件まで買い漁っているという話を聞く。

実際、或る店舗物件の登記簿謄本を別の用件で取り寄せたところ、

英国領下の離島に籍を置く東洋の会社が家主になっていることが判明し、

非常に驚いたことがあった。

その店舗は、昔からの大家さんが国内の不動産業者に売却した後、

或る銀行の系列会社に転売され、更に東洋の会社に再度転売されていた。

その会社は近くの別の店舗物件を買い入れていることも後日分かった。

関係する業者の話によると、実際の売買手配は、

日本の代理店が委任されて差配しており、外資系証券会社から独立した

ビジネスマンなどが代理店を経営しているケースも多いらしい。

都心の繁華街やビジネス街ならともかく、地域住民しか利用しないような

商店街の古い木造店舗が、海の向こうの怪しい投資家の投機対象になっている、

そんなことが現実に、しかも日常的に進んでいるのである。

テナントは営業したまま、家主だけが転々と変わっているので、

お店の店員はそうした事実に全く気づいていない場合もある。

商店街として店舗だけでなくその家主にも様々なお願いをすることがあるが、

外国の投資家相手に対応することはほとんど不可能であろう。

それ以前に、転々と変わる家主の把握すら難しいかもしれない。

 

日々のニュースで伝えられる深刻な国際問題に比べれば、

取るに足らない小さな出来事かもしれない。

しかし、地域の病理というものは、気づかないうちに自覚症状もなく

この国の全身を蝕んでしまう場合がある。

早期発見、早期治療が肝心だと思うのだが、それとも私の杞憂であろうか。

 

#地域社会 #商店街 #商工会 #外国人経営者